9月21日(火)携帯を忘れた日(官能小説)

 おとといの夜、久々に仕事の後にリックと金麦を飲んだ。夜の9時くらいのセブンイレブン。職場の愚痴、アンダーポリティカルコレクトネス。お互いただビールが飲みたかっただけで、1杯終わればすぐに帰る予定だった。しかし、1杯目が飲み終わるころには二敗目が欲しくなるものだ。2杯目を買ってベンチがあるプラザパークに向かう。途中、お尻の大きな女性が一人で歩いていた。リックが、

「ナンパに成功したらスペイン料理をご馳走してあげる。」

というので、すごいやる気のないナンパを試みる。女性は僕のほうを見向きもせずに、あっち行けという仕草。リックが僕に続いて片言の日本語で追い打ちをかける。なぜかあっけなく一緒に飲みに行きたいということに。

 

 しかもスペイン料理じゃなくて、普通の居酒屋がいいらしい。お金のない僕らにとってこんなに好都合なことはない。高架下の居酒屋に座って、ビールと焼酎。生ビールが冷えていないから瓶ビールに変えろというめんどくさいくだり。お酒が入り、テンションが上がってキレだすのはかっこよくない。3人のおしゃべりの中で、リックと喜びを共有。やっぱり彼とはリズムが共通するところがある。うれしい。同席してくれたちーちゃんは金融系の仕事をしているとのこと。7年くらいの海外生活経験があると言っていて、自分をマイノリティーだと思っているような雰囲気。日本は生活しやすいけど、どうしても好きになれないらしい。

「高学歴で有名な会社で働いている人なんて薄っぺらい人ばかりだよ。」

という酔っぱらいの薄っぺらで愛しい意見。ちーちゃんがタバコを吸いたいというので1本渡す。ほとんど吸ったことが無いようで、口にくわえずに手に持ったまま火をつけようとしている。すかさずリックが、

「それは葉巻の火のつけ方だよ、キューバ人かよ!!」

と突っ込む。味わい深い幸せな瞬間だ。

 

 カラオケ館へ移動。リックが歌うスペイン語の歌が楽しい。

「俺はオペラ歌手になりたかった。」

と言う。日本人と結婚している40歳のメキシコ人。前の奥さんも日本人である。10代半ばに路上でタマリンドウォーターを売り始め、カンクンの高級ホテルのサービス、バーテンダーへと昇りつめ、日本人のバックパッカーと結婚。日本に移住し、都内の数々の高級ホテルで働いた経験を持つ。3か国語で接客ができるが酒癖が悪いという、愛すべきキャラクターである。僕はクラッシュ、スミス、ビートルズなどを歌う。途中でリックを置いてタバコを吸いに出る。ちょっとごめんと思いながら。タバコを吸いながらちーちゃんは若いのにいろいろ経験している女性であることがわかり始める。2人で盛り上がり、りっくを撒いてしまおうという話になる。カラオケに置いていく作戦を決行。しかし受付で止められてしまう。結局リックのところに戻り、3人で店を出る。リックが店員とけんかしている間に、ちーちゃんが、

「右行ったところに隠れている。」

と耳打ちをしてきた。会計を済ませて出たところでリックが、

「渋谷に行く。」

と言ってタクシーに乗り始めたのでそこで別れた。渋谷に行くというのは道玄坂で風俗に行くという意味だろうと思う。

 

 銀座4丁目のマックの前でタバコを吸いながらおしゃべり。本当はまだ学生で、インターン中。今は銀座のビジホに1か月ほど住んでいるらしい。

「この後部屋に一緒に行ってもいいけど汚いんだよねー。」

という。僕の脳内はもう次の展開のことで頭がいっぱいである。おかげでどんなおしゃべりをしているのかわからず、適当に相槌を打ってしまう。過去に大変なことがあったとか、淡々としたしゃべり方が好きだとか、1億円稼ぎたいとか断片的なことしか頭に入ってこない。

 

 飲み物とコンドームを買って、ちーちゃんの部屋へ。まだ名前も覚えていなかったので頭の中で繰り返し連呼しながら。部屋に入ると電気もつけることなくトイレに入り、パジャマに着替え、ベッドにダイブ。

「歯も磨かないの?」

と聞くとあいまいな返事が返ってきた。なんとなく公平にした方がいいと思ったので僕も歯も磨かずに、

「パンツ一丁で寝ていい?」

と聞いてそのままダイブ。ブラのホックを外してあげてニップルスを中心にブレストを触ってあげる。キスをしてもあまりノリはよくないが、かわいい声は発してくれる。おっぱいから下半身のほうへ行くと見せかけて、行かないというのを数回繰り返す。じらした後に触ったが、あまり濡れていない。指を濡らしてトリハイを優しく触る。そしてトリハイジンジャー。今までで一番優しいトリハイジンジャー。シャワーもしていないけど、全然嫌な感じはしない。フィンガリングス。きつめである。多分何か出そうな感じがして、

「ちょっと、いやん、だめ。」

「キスものってくれないならこのまま終わるよ?」

と言い返して、再度キス。喉が渇いていたのでジャスミンティーを飲んでキス。口移し。

「ゴムつけるね。」

と言って箱を開ける。そして箱を開けてゴムを用意してる間にいつものようにふにゃふにゃになる。

「ちょっと触って元気にしてくれない?」

と言って触ってもらったが、若いちーちゃんに僕の気持ちを分かってもらうことはできず。我慢ならなかったので、自分でしごいて半立ちぐらいで生で挿入。やっぱりきつめ。正常位でベッドのばねを使って動く。すぐにいってしまいそう。2度くらいこらえて、

「もういいや。あ、やべ、生でやってもうた。」

心の声。そして再度お茶を飲んで寝てしまう。多分4時とか5時とか。外はうっすら白んでいる。

 

 7時半くらいまで寝て、シャワーを借りる。風呂場には湿気を帯びた下着が散乱していた。適当にかたずけて身体を洗う。風呂から出てコンビニにワックスを買いに行く。タバコを一本吸って、髪を乾かして、9時くらいまで再度横になる。ちょっとだけ愛撫。その日は大学院のテストとのことだったので頑張ってと伝えて出勤。9時半からのシフト。いつもより頑張る。

 

 仕事を終えて家に帰る。ケータイを家に忘れていたのですぐにチェック。生でやってしまった罪悪感と久々のセックスの嬉しさが入り混じる。20代前半の女の子にひどいことをしてしまったと思う。せめて優しくしてあげたい。妊娠したならちゃんと二人で議論をしたい。ホテルのサイドボードにあった生理薬とオクトパスの感触がフラッシュバックする。ごめんと思う。ネットで妊娠する確率とかを調べてしまう。馬鹿すぎるひどい人間だと思う。今日は満月。