ミュージシャン

 5月14日ミュージシャン

 

 午後の早い時間にシティセンターのレコード屋を物色。好きな雰囲気のレコード屋は見つからなかった。店のお兄さんにコンサート情報を尋ねたが、「知らないよ、おれは家族のビジネスに参加させられているだけだから。」と言っていた。レコード屋の息子があまり音楽に興味を持っていないというのは信じがたかった。

 

 宿に戻りエレベーターでエリーというフリーランスのカメラマンに遭遇。ビビアン・メイヤーの話で盛り上がる。今晩一緒に音楽を聴きに行くことに。

 

 洗濯を済ませてから少々書見。仕事探しのアイディアが枯渇してきたので少しリラックスして作戦を練ろう。

 

7時ごろ宿を出てエリーと共にサウスバンクへ向かう。Rumps RoomというButter Beats Recordのおじさんに勧められたバーへ。バーの隣の広場では屋台がたくさん出ていていい雰囲気だった。屋台を一通り冷やかしてから、バー内へ。今日のライブスケジュールをDJのお兄さんに訊く。お兄さんは、「日本人でしょ。」と訊いてきた。級友にあったようにテンションが上がり、「Kerbside Collectionのライブはいつですか。」と訊くと、「わからない。」そして、「今日はDJだけでライブはない。」とお兄いさん。ボウンダリーホテルという場所を紹介してくれ、きっといいバンドが出ると教えてくれた。

 

 Boundary Hotelに着くと2階でライブが行われていた。CC the Catというレゲエとかスカのような音楽を演奏するバンドだった。5分くらいしか観られなかったが、いいバンドだった。カリビアン風の家族がステージの前で踊っていていい雰囲気を作り出していた。

 

その後、1階のバーでブラジリアンミュージックの演奏が行われるという情報を得たので、1階でビール片手にエリーとおしゃべり。エリーはなかなかの音楽好きである。いろいろ教えてくれた。ブリスベン・インターナショナル・ジャズ・フェスティバルも一緒に行こうと言って盛り上がった。

 

 ジャズ・ボサノヴァの演奏がはじまる。かなりいい。ギター、ベース、ドラム、トランペットサックス、トロンボーン。「一杯飲んでからまたやるわ。」とアフロのギターボーカルが言ったので、僕とエリーはタバコを1本吸うことに。

 

 タバコを吸っていると、スエードのジャケットにハットをかぶった中年の男性と目が合い、おしゃべり。「かつて周辺にはBoundary Hotel以外何もなく、このホテルを境界に有色人種の居住区が決められていた。実は俺もミュージシャンで、昨日は、今演奏しているアフロの男とプレイしていた。ここら辺のミュージシャンはお金のための演奏を終えると、Hard Grave Stというところへ行き、ただ楽しく演奏する。ゲリラ的に始まるから聴きに行くのは大変かもね。アンダーグラウンドミュージックのほうがいいよ。よかったら今からアボリジナルスと一緒に飲みに行かないか。」とお兄さん。

 

 面白い話を大量に浴びせかけてくる男についていかないわけがない。演奏は途中だったが、エリーも乗り気である。木の下のベンチに座るとビールを手渡された。男は、「今警察がいるからちょっと隠して。」と言いながら、ジャケットの懐に入ったワインのボトルを見せつけてきた。面白い男である。3人のアボリジナルスは警察を罵ったりしていた。挨拶の仕方、ウォークアバウト、ドリームタイム、ソングラインなどについて訊いた。深く理解するにはもっと彼らと時間を過ごさなければいけないと思った。

 

 しばらくおしゃべりを楽しんだ後、Boundary Hotelにブラジリアンミュージックを聴きに戻る。杖を持ってカウンターに座っていたおじいさんがステージに上がって行き、バンドと共にジミヘンのヘイジョー。続けてサンタナ。ヒット・ザ・ロードジャック。酔ったおじさんがステージの前で指揮を振り始め、フォーンセクションに合図を出していた。

 

コンサートが終わり、ギターの男と握手。CACHACA GROOVEと僕の携帯で打ち、ホームページを開いてくれた。ブリスベンに住んでいて、Boundary Hotelでよくやっているバンドだと教えてくれた。「最高だった。また聴きに来ます。」と伝えた。

 

帰り道、エリーとひたすら話していた。お酒と音楽の後だったので、嘘がない話ができて楽しかった。